濃色制限とM-103命令とその条文

M-103命令と濃色制限

 概要

 正式名称:Conservation Order M-103Dyestuffs and Organic Pigments

 発令機関:War Production BoardWPB, 戦時生産局)

 目的:不足していた有機染料(特にアニリン系)を軍需に優先供給し、民需を制限するため。

 

 濃色制限の有無

 条文には「必要以上に濃い色で染めないこと(not to dye deeper shades than standard when requesting additional allotments)」と明記。

 割当以上の追加配給を受ける条件として、濃色仕上げは禁止された。

 よって、濃色仕上げは制度的に制限され、結果的に「青みがかった生地」も生まれた。

 直接コーンミルズ社に「青く染めろ」と命じられたわけではなく、制度の副作用で濃色が難しくなった。

 施行時期

 1942年初頭:染料統制が始まり、染料配給制導入、同年春から夏頃には「青みがかった」生地が出荷される。

 1943年:濃色制限条項が本格運用  「青みがかった生地」の大戦モデルが店頭に並ぶ

 19454月:M-103改正版でさらに強化。

 

統制対象と運用

 対象:染料(Dyestuffs)、有機顔料(Organic Pigments

 理由:爆薬、迷彩布、軍旗、勲章リボンなど軍需用途に不可欠。

 運用:

 四半期(3ヶ月)ごとに染料メーカー・繊維会社が必要量を申請。

 WPBがクラス(AD)で優先順位を設定。

 軍需が最優先、民需衣料(ジーンズなど)は下位クラス扱い。

 追加配給の条件として「標準以上の濃色で染めないこと」が義務化。

 

条文証拠

 出典:連邦官報(Federal Register10 Fed. Reg. 3603, 194544日号

 条文抜粋:

...provided he is not using any of his regular quota to dye or print any material a deeper shade than a standard consistent with available supplies of dyestuffs...

 和訳:

「(追加配給を受けるには)通常割当の範囲で、入手可能な染料供給に見合った“標準”より深い色で染めていないことが条件」

 

まとめ

 M-103は布や金具を制限した L-85命令の「染料版」。

 濃色仕上げを制度的に抑制したため、戦時期のデニムには「黒っぽいロット」と「青みがかったロット」が混在した。